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◆不定期日記ログ◆

■2018-07-19 : カオスのしもべ
 酷暑の通勤に疲れ果てた俺は温泉を求めた。
 そして手頃な近さにある山梨県の下部温泉へと向かった。

 近くには何度か訪れている山梨県富士川クラフトパークがある。山梨県は平成の合併によって2009年に静岡県が手放した「富士川町」という名前を翌年に秒速で収奪しており静岡県民の感情を逆撫でしたが、クラフトパークは富士川町でなく身延町にあるのでこの件とは関係ない。

 クラフトパークは広い公園になっている。しかし当日は全国的に殺人的な暑さだったため、のんきに散歩などしたら命がない。できるだけ外に出ない方向で動いた。

和紙制作中
 500円で和紙をすいて葉書を作れるので、娘氏総監督のもと和紙をすいた。無軌道きわまりない着色だったが、それなりのものができてしまうのが和紙の不思議さである。


 とにかく気温がやばい。我々は日の高いうちから下部温泉に向かうことにした。下部温泉郷はこんな狭い土地によくぞここまで、という感じに建物が密集している。むしろ温泉以外何もないといっても過言ではない。それゆえ温泉を求める人にはうってつけのロケーションである。

 今回のお宿は裕貴屋さん。近隣に山田温泉というお店(廃業していた)があり、なぜかゴーカイブルーの姿がチラつくが当然まったく関係ない。

裕貴屋
 裕貴屋さんは築100年というド迫力の木造建築で、狭い温泉街にありがちな、増改築による複雑怪奇な構造をしている。こういうの探索してどういう増築をしてきたのか想像するのホント最高なんだけど、驚くべきことにここはストリートビューで女湯の奥まで入れる。オイオイ桃鉄でも女湯覗くのにえらい手続きが要るのにいいのかよ。いいらしいのでみんなもレッツピーピング

 さて、早い時間にチェックインしたので、我々はさっそく家族露天風呂のひとつを占拠した。娘氏は40度近くまで沸かされた温泉には決して近寄ろうとしなかったので、やむを得ず水でうすめてぶっかけてやった。
 娘氏は温泉そのものより、温泉にうかぶ竹炭が気になるらしく、「なんですみが固まってるの~~? すみはイカやタコがはくものでしょ~~?」と素朴な疑問を口にしていた。そうなんだよな~~炭と墨は違うんだよな~~むずかしくてわかんないかな~~。

 家族風呂は沸かされたものだが、ここには源泉(30℃)そのままの洞窟風呂も存在する。その名の通り地下にあり照明も最小限で、ロマン溢れるロケーションで水風呂に浸れる。この災害クラスの酷暑において最高のレジャーといえよう。
 強いて言えば壁の向こうから娘氏が知らないおばちゃんにちやほやされている声が聞こえてくる点がロマンに欠けていた。


 さらに素晴らしい点として、玄関近くの部屋にレトロな冷蔵庫が置いてあり、その中に並んでいる多種多様な葡萄酒とぶどうジュースがセルフサービスで飲み放題という点が挙げられる。辛口も甘口も赤も白も好きな量だけ出して飲める……しかもデカンタで部屋に持ち込んでもいいと……あなたならどうする? 最高だった……。
 娘氏はこのコーナーになぜか置かれているマシュマロをたいそう気に入り、パパチャンはたびたびここに連れてこられるはめになった。


 お部屋にオシャレなコーヒーミルがあり、たいそう良い香りの豆が付属していた。朝ひとっ風呂浴びるまえに、せっかくなので挽いて淹れた。ミルクと砂糖を入れて娘氏にも勧めたところ、意外と悪くない反応だった。しかし「まあ初めてのコーヒーだしこんなもんだよね」とちょっと目を離しているスキに娘氏は我々二人の分を飲み干していた。

 しびれるような香りいっぱいの琥珀色した飲み物を大量に摂取した娘氏は、やがて心うきうき、とても不思議なこのムードになり、たちまちお部屋で飛んだり跳ねたりし始めた。みんな陽気に飲んで踊ろう愛のコーヒールンバ。

 ……数時間後、旅館をチェックアウトするころには、娘氏は「オナカイタイ」と「ゲーデソウ」しかいわない可哀そうな子になっていた。
 我々は以降の旅程をすべて諦めてまっすぐおうちに帰りましたとさ。おしまい。