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◆不定期日記ログ◆

■2017-03-19 : 知らない俺の物語
 幸運にも映画館へ行く時間が取れたので、『モアナ』か『ひるね姫』を観よっかな~~と出かけて、上映時間が合った『ひるね姫』のほうを観てきた。
 なにしろ去年は邦画の話題作が何本も出たのに全部ことごとく旬を逃してひとつも観れてないありさまで、映画館へ行くだけでも貴重な時間なのだ。
 この徹頭徹尾キャラクターにハイライトもシャドウも入れない塗り、最近の流行りなのかなあと思ったけど、『君の名は。』も『バケモノの子』も最低限の陰影はついているようなので気のせいだった。作画は楽そうだけど、光の表現とか立体感とか要求されると大変そう。
 そして音楽が下村陽子先生であらせられる。「下村陽子がアレンジしたデイ・ドリーム・ビリーバーが主題歌なので観ろ」で通じる人にはこれ以上の言葉は要らないがいるのかそんな奴。でも「下村陽子がアレンジしたFF4バトル2が聴けるからマリオRPGやれ」っていったらやる奴いない? いないか?

 公開されたばかりの映画なのでストーリーのネタバレは避けよう。お話の感じはまあ公式の「ストーリー」を見てもらうとして、ここから先はそれより多少つっこんだ話になるので、観る予定のある人で情報をシャットアウトしておきたいタイプの人は一旦帰ってほしい。そして必ずここに帰ってきてほしい。


 主人公はなぜか続き物の夢を見る。その夢の世界は、子どもの頃にねんねする前に父親が語ってくれたおとぎ話と同じだ。ヤバイな、俺も娘に語る物語はもうちょっとまともなものを創作する必要があるか。
 冒頭からこのおとぎ話が始まるが、「王国」が「父の勤めた大工場」であり、「魔法」が「AI」であることはすぐに読み取れる。それがわかるころ、おとぎ話の比喩表現が、現実世界でいま起きている状況とリンクしはじめる。

 このへん『テラビシアにかける橋』をちょっと思い出した。あれも現実世界の状況がシビアになると空想世界もテラシビアになる演出があった。ただこちらの場合、夢の世界の描写は「現実世界に実際に起きたことの比喩」にとどまらず、夢の世界の比喩表現を使っていま現実に起きていることを説明し始めるので多少複雑になる。

 たとえばファンタジー世界であるキャラクターが焼死するシーンを出すことで、そのキャラクターが現実世界で解雇(Fire)されたことをド派手に示したりしてくる。わかる人だけにわかりやすく言うと「コパール城は鉄のとりでよ! ふつうに攻めるんじゃダメッ!!」「そうだ!」「そうだ!」っていうのをクライマックス全編でやってる状態。だからクライマックスで何が起きたか、具体的なことは想像するほかない。


 しかしこの比喩表現、「王国=企業」「魔法=AI」として、その王国に攻めてくるカイジュウじみた「オニ」は何を示しているんだろう。「王国の兵器では太刀打ちができず、魔法でしか倒せない存在」という設定が明言されている以上、単にお父さんが『パシフィック・リム』のファンだった、というわけではなさそうだ。

 おそらく「オニ」が示していたのは「車検証」ではないだろうか……俺は今日、車検当日になって車検証を紛失していることがわかり、むなしくも車検を始めることができなかった……あんなもんどうやったらダッシュボードの中から消えるんだよ……二年前に車検を通した工場で、車検の期限を示すステッカーも正しい期限を指しているというのに、あの紙ッペラ1枚ないだけでなぜ車検を始めることができないのか。再発行はお役所の開いている平日でないとできない。なぜなのか。俺にはすでに国から個体番号を示すナンバーが振られているのではないのか。それなのに認め印と書類を携えて首長の居城へ赴かなければ、二年前に車検を通したことすら調べられないのか。いったい何のための番号だ。このようなくだらないペーパーのやりとりで現場の人間の作業量をスポイルし続けているから、我が国は後進国へ転落しようとしているのではないのか。それが「オニ」というカイジュウになって、海外から日本企業を殴りに来ているのではないのか。それを破壊する英知の光こそがAIなのではないのか。無敵のマイナンバー制度とAI市役所があれば自動車工場も俺も無駄足を踏まなくて済んだのだ。こんな馬鹿な話があるか……むしろこんな紙ッペラを証明書に使ってる中世レベルの土人国家ニッポンこそがファンタジーのおとぎ話で、実際の俺は無敵のマイナンバー制度による快適で幸福なマザーコンピューターの支配を受けているのではないのか……? そうに決まっている……車検期限までにモーフィアスが赤い薬を持ってきてくれるんだぁ……ウフフフ……。